2013年3月9日土曜日

全く異なる韓日新政権の船出:韓国の景気低迷はいつまで続くのか?

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朝鮮日報 記事入力 : 2013/03/09 12:01
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/09/2013030900525.html

【コラム】全く異なる韓日新政権の船出

 新聞社に広告が押し寄せているという。
 広告を出したい広告主と「紙面がない」という新聞社との間のいざこざも、数年ぶりに見られた。
 銀座や赤坂のバーも浮かれている。
 これは、安倍政権発足から瞬く間に2カ月過ぎた日本の風景だ。
 ある人は「まるで小泉時代の再来」と語った。

 小泉元首相の在任期間は5年5カ月に及んだ。
 2006年9月末の退任時まで平均支持率64%を維持した。
 都心の再開発、規制緩和、円安により好況をもたらした指導者でもあった。
 小泉首相泰退任後、久しぶりにいい気分を味わっている日本人の雰囲気が、リアルに伝わってくる。

 一方、ソウルの春は落ち着きがない。
 景気低迷はいつまで続くのか、見当も付かない。
 証券会社や資産運用会社の間では、いつ倒産するか分からないという恐怖感が漂っている。
 企業は為替レートの問題で輸出が振わず、すくみ上がっている。
 ここに北朝鮮による核の脅しまで加わり、韓国国民が感じる重圧は倍になった。

 朴槿恵(パク・クンヘ)政権は、安倍政権より2カ月遅れで発足した。
 しかし両政権の船出の風景は、2カ月ずれているというだけにとどまらない。
 安倍政権は、野球でいえば一回で大量得点したようなものだ。
 いや、それどころか就任前から円安が進み、企業は政権交代に歓呼の声を上げた。
 市場がまず動いた。
 発足前から安倍政権に対する期待は高まった。
 ずっと大勢論の上に立ってきた朴槿恵大統領に対する期待の指数も、安倍首相に劣らなかった。

 時を同じくして発足した両政権は、なぜ全く異なる風景を生み出したのか。
 朴大統領は大統領候補時代、福祉・雇用創出・経済民主化を前面に押し出した。
 いずれも韓国国民が支持する国政目標だ。名分を強調した目標重視型の公約だった。

 安倍首相は選挙期間中「紙幣の印刷機をじゃんじゃん回して…」と語った。
 円安を進めると公言し、補正予算の編成を約束した。
 資金を増やし、財政支出を拡大させ、規制を緩和するという成長政策を「三本の矢」と命名した。
 福祉・雇用といった「的」を強調するのではなく、「矢」を際立たせた。

 韓国の与党セヌリ党の大統領選公約集にも、多くの「矢」が準備されていた。
 しかし、有権者を説得するときには、矢よりも的の方を重視した。
 しかもその矢は長さがまちまちで、飛んでいく方向も分かりやすく整理されてはいなかった。

 安倍政権の「三本の矢」と朴槿恵政権の「三つの的」は、市場で異なる反応を呼び起こした。
 企業の動きを見てみよう。
 安倍首相は、各企業に賃金の引き上げを要求した。
 政府だけがあちこち駆け回っても、企業が動かなければ景気は回復しないと主張した。
 こうした要請に応え、今春からの賃金引き上げを公に宣言する企業が相次いでいる。

 韓国の新政権は、選挙のときは「経済民主化」を掲げて大企業を圧迫したのに、引き継ぎ委員会が発表した国政ビジョンからはその五文字を削除してしまった。
 こうしたおかしな動きが企業を混乱させた。
 一方では、ただならぬ気配を感じて系列企業のパン屋を売却し、系列企業への事業集約はしないという約束をした。
 ところが他方では、砂糖・豆腐・牛乳の価格を上げるずぶとい企業も登場した。
 的が揺らげば、企業や国民は、自分が正しいと信じる目標に向かってバラバラに走り出す。

 安倍政権は「三本の矢」の射手を、矢に合わせて起用している。
 円安を誘導して資金を増やす役を務める日本銀行の総裁に、黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を指名した。
 黒田総裁は財務官僚出身らしからぬ積極財政論者で、金を使ってインフレを誘導すべきだと主張している。
 同じく新任の2人の日銀副総裁も、安倍首相と同じ路線を支持してきた。

 朴大統領は経済副首相、大統領府(青瓦台)経済首席、金融委員長など経済チームの中心となる長官陣に官僚出身者を選んだ。
 選挙時に朴大統領の公約を練った国家未来研究院からは、経済分野の人物は一人も起用されなかった。
 新経済チームの長官たちが、福祉・雇用創出といった国政ビジョンやそれを達成するための政策手段について、朴大統領とどの程度の共通認識を持っているのか、知るすべはない。
 創造経済の「特急射手」役を務めるはずだったベンチャー企業家は早くも脱落した。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で韓国があえなく予選落ちしたのを受け、日本メディアは記事に「まさか…」とタイトルを付けた。
 信じられない、というわけだ。
 両国の新政権の経済勝負は、まだ一回も終わっていない。
 安倍政権の矢は日本経済にとって「毒矢」になるだろう、
という不吉な見方も消えてはいない。
 韓国は、野球界で長く語られてきた「九回裏までゲームは終わらない」という言葉に、
 最後の一筋の望みを託すことになるだろう。





【 見えない歪み 】


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