2012年12月2日日曜日

ハーバード大病院の競争力:競争力は無限の競争から生まれる

_


朝鮮日報 記事入力 : 2012/12/02 09:39
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/12/02/2012120200151.html

【コラム】ハーバード大病院の競争力

 ソウル大学医学部のホ・ドンウン教授は、USBメモリーほどのサイズのプラスチック製チップに肺細胞を入れ、人工肺を作った。
 米国ハーバード大学医学大学院(ハーバード・メディカル・スクール)のユ・スンシク教授は、3次元プリンターにインクの代わりに幹細胞を入れ、臓器を印刷する技術を開発した。
 工学部出身の二人が医学者として世界的な注目を受けるようになった背景には、ハーバード大医学大学院の関連病院という共通の土壌があった。

 ホ教授は今年初めまで、ハーバード大医学大学院と関連のある小児病院とワイス研究所に在職していた。
 ユ教授は現在、同大学院のブリガム婦人科病院に所属している。
 同大学院は米国の医学部評価の研究部門で不動の1位を誇る。
 ユ教授は
 「研究の主軸は病院に在籍する多くの若手教授たち。
 その競争力は無限の競争から生まれる」
と語る。

 2009年から10年にかけ、ハーバード大の教授997人のうち定年はなく地位を保障された教授(シニア)は66%、准教授などのジュニアは34%だった。
 これに対し、ハーバード大医学大学院の関連病院18カ所に勤める教授7793人のうち、シニアは754人、ジュニアは7039人。
 シニアとジュニアの比率は1対9で、本校とは正反対だ。
 病院のジュニアは大半がシニアに昇進できず、外部から研究費を得られなければ、次の学期には研究室を去ることになる。

 それにもかかわらず、他大学の安定した教授職を捨てて同大学院の関連病院に移りたいと希望する研究者が後を絶たない。
 コーネル大出身のエミリー・スターン教授は、その理由を
 「リスクの大きい研究を積極的に実施し、異分野融合研究が自然に行われているため」
と説明した。
 「給料が安くてもいいから、研究のため診察時間を最小限に抑えてほしい」
と求める医師も多いという。

 韓国の医学部も研究中心の学部へと転換を急いでいる。
 ホ・ドンウン教授は
 「医工学を専門とする教授が3年前に比べ2倍に増えた」
と話すが、まだ大幅に不足している。
 ソウル大医学部と三つの付属病院に勤める教授約1000人のうち、基礎研究を専門とする教授は52人にすぎない。
 ソウル大病院・医生命研究院の研究教授49人を加えても、研究に専念する教授は全体の10%にとどまる。
 患者を診察する教授たちも研究を行っているが、実際には忙しさのあまり十分な研究ができずにいる。

 毎年、大学修学能力試験(修能=日本の大学入試センター試験に相当)で高得点を取った生徒たちが医学部に進学しているが、基礎研究の道に進む卒業生は1%に満たない。
 韓国を代表する脳科学者の徐維憲(ソ・ユホン)ソウル大医学部教授は
 「医師が毎日患者を診察しても一生に10万人ほどしか診察できないが、研究で病気の原理を突き止め、治療法を開発すれば、数億人が恩恵を受けられる」
と、研究の重要性を訴えている。
 ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった日本の山中伸弥・京都大教授も、整形外科医から基礎研究に転向した医学者だ。

 韓国政府は2030年までにノーベル賞受賞者を出すという目標の下、若手の医学者10人に対し、年間1億ウォン(約760万円)を3年にわたり支援するプロジェクトを進めている。
 しかし、この程度では競争を通じた発展は見込めない。
 政府と大学、病院は早急に、研究に専念できる教授を増やす方法を模索する必要がある。





【 見えない歪み 】


_