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ウォールストリートジャーナル * 2013年 2月 28日 11:59 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324432404578331053826972548.html?mod=WSJJP_hp_EditorsPicks_1
韓国の高齢者に忍び寄る貧困 By IN-SOO NAM
【ソウル】韓国の朴槿恵・新大統領は就任演説でより公正な社会の実現を約束したが、同大統領にとって最大の難題の1つは拡大する所得格差への対応であろう。
同国では高齢者のほぼ2人に1人が貧困状態に陥っている。
朴大統領は25日の就任演説で、経済的により厳しい時代が今後到来することに言及し、同国の経済の奇跡における新しい章について語った。
経済の奇跡は、朝鮮戦争後の数十年にわたる急速な成長で多くの韓国人を貧困から脱却させた一方で、格差を深刻化させた。
韓国社会の経済格差は、若者と高齢者との間で最も顕著だ。
この問題は朴氏が勝利を収めた大統領選挙における主要なテーマだった。
韓国の高齢者は従来、引退後の生活を家族からの支援に頼ってきた。
しかし、韓国人は教育費など差し迫った費用を優先するため、同国の貯蓄率はアジア最低だ。
また近代化に伴い、数世代にわたる家族構成は一般的でなくなってきている。
このため、高齢者はますます自活しなくてはならなくなっている。
元兵士のヨー・ジュンナムさん(72)は生活のため、ソウルの建設現場で日雇い労働者として働いている。
ヨーさんは
「政府の退役軍人基金から月に15万ウォン(約1万2700円)が支給されるが、交通費と食費の一部にしかならない。
建設現場で働いて稼いでいても、やりくりは難しい」
と話した。
子どもたちも生活していくのがやっとの状態なため、ヨーさんを金銭的に支える余裕がないという。
韓国の高齢者の貧困率は、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国で最悪だ。
入手可能なもので最新となる2011年のデータによると、65歳以上の高齢者で、家計所得の中央値の半分に満たない額で生活している人の割合は45.1%に及ぶ。
OECDの平均は13.5%で、6年前の42%からも増えている。
韓国の定年年齢の平均は57歳。
国民年金制度に加入している人々(通常は元サラリーマン)は61歳から年金を受け取れる。
前の李明博政権は昨年 12月、退職年齢を引き上げる必要性を示唆していたが、具体的措置については提案しなかった。
一部の政府系ないし民間のシンクタンクは最近、年金の支払い開始年齢を68歳に引き上げることを提案した。
朴大統領は14年7月に資産調査に基づく新制度、国民幸福基金(National Happiness Pension)を導入して、高齢者の低所得問題に対応する計画だ。
国民幸福基金は現行の国民年金を補う制度になる。
新計画では、65歳以上の高齢者は所得水準に応じ、月に4万から20万ウォンを受け取れる。
現行の老齢基礎年金は9万4000ウォンだが、他に所得がない人にしか支給されない。
また、同国政府はがんなど年齢に関係がある4大疾病に対する医療サービスを無償で提供する計画だ。
この計画は論議を呼んでいる。
新政権は新たな支給にかかるコストが向こう5年間で40兆ウォン前後に達すると推測している。
韓国の国家財政は概して健全で、債務のGDP(国内総生産)に対する比率は33.4%と低いが、朴宰完前企画財政省長官など前政権の当局者は、高額な社会保障関連支出により、財政の持続可能性が大きく損なわれると警告していた。
韓国はまた、世界最低クラスの出生率という難題も抱えている。
低出生率は年金資金拠出の面で、若い世代にかかる負担を増大させる。
政府は保育や育児休暇への補助金など、出生率を上げるための各種予算を11-15年で50兆ウォンと、2倍以上に増やした。
企画財政省のシン・ジェユン次官は今月、同国が世代間の衝突という困難に直面していると述べ、
これが1950年から53年までの朝鮮戦争をきっかけとして始まった急速な工業化がもたらした「社会病理」だと指摘した。
アナリストたちは、新政権が深刻な問題に直面すると指摘し、朴大統領は財政の健全性を維持しつつ、高齢者の生活向上に向けた巧みな経済手腕を示すことが必要だと述べている。
政府系のシンクタンク、韓国開発研究院の研究員であるヨン・ヒースク氏は、
「わたしは新たな社会保障制度によって支出が大幅に増えないことを期待しているが、意図した目的を達成できないと思う」
と話した。
既存の国民年金制度である韓国国民年金(National Pension Service)の12年末時点の資産額は約392兆ウォン。
一部の民間のシンクタンクは、現在の人口動態の傾向に基づくと、資産額が2043年のピークを境に減少に転じ、2060年までに枯渇すると推測している。
このため、若い世代は自分たちの老後を心配している。
小売企業に務めるサラリーマンのオー・ウォンムンさん(30)は、
「高齢者はここ何十年の経済成長に貢献したことへの報酬を欲しがっているが、若者が金銭的にこれほど大きな負担を背負うのは不公平だ」
と述べた。
オーさんは
「国民年金の資産額が減少したり、枯渇したりすることがあれば、わたしのような若者は支給開始年齢の遅れや支給額の大幅な削減が避けられないかもしれない」
と話した。
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朝鮮日報 記事入力 : 2013/02/28 09:30
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/02/28/2013022800600.html
【社説】所得不平等放置すれば経済成長も止まる
金洛年(キム・ナクニョン)東国大教授が国税庁のデータを利用し、所得分配の不平等の度合いを示すジニ係数(数値が1に近いほど不平等)を試算した結果、
可処分所得のジニ係数が政府の公式統計(0.308)よりも高い「0.371」
に達していることが分かった。
チリ、メキシコ、トルコ、米国に次ぐ5番目の高さで、
経済協力開発機構(OECD)の平均(0.314)をはるかに上回った。
金教授の主張が事実だとすれば、
韓国は主要国で最も不平等な国に分類される。
金教授が作成した統計は、韓国の所得分配状態がOECD加盟国で中間水準にあるとする政府の公式な立場とは異なるものだ。
金教授は、統計庁の家計所得調査では所得公開をためらう高所得層が脱落しており、所得分配の不平等さが実際よりも反映されていないと指摘した。
国民の大多数は韓国の所得格差が深刻だと肌で感じている。
月収100万ウォン(約8万5000円)前後の低賃金労働者が数多くいるかと思えば、年収数億ウォン(数千万円)から数十億ウォン(数億円)の高所得者も増えている。
過去最高益を上げた一部大企業の成果給支給ラッシュを見つめる市民は虚脱感を味わっている。
所得不平等を放置すれば、社会的な対立が必然的に起き、経済成長も困難になる。
貧困層がまともな教育を受けられず、国家全体の人的資源が不足するようになるからだ。
所得分配の不平等を緩和するためには、貧困層に対するセーフティーネットが現在よりも強化されなければならない。
韓国は先進国に比べ、政府の福祉政策が所得再分配にさほど効果を発揮できずにいる。
限られた財源で福祉の恩恵が貧困層に効率的に及ぶようにするためのシステムを構築しなければならない。
所得不平等の一因であるサービス業の生産性の低さを改善する対策も急がれる。
韓国の製造業の生産性は先進国レベルにあるのに対し、サービス業は60%程度にとどまっている。
低熟練労働者が卸小売り、飲食・宿泊業などの従来型のサービス業に集中した結果、
給与労働者の賃金中央値の3分の2に満たない低賃金労働者が「25.9%」を占め、
その割合はOECD加盟国で最も高い。
新政権は所得不平等を解消する方策として、福祉支出を増やす方法を用いるだけでなく、サービス業と中小企業の生産性を高め、教育システムを変革し、国家経済がバランスの取れた成長を達成するための大きなビジョンを描くベきだ。
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朝鮮日報 記事入力 : 2013/02/28 09:30
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/02/28/2013022800601.html
所得不平等、公式統計より深刻?
所得分配の不平等の程度を示す「ジニ係数」を見ると、韓国の数値は統計庁の公式統計では経済協力開発機構(OECD)加盟国の中間程度だが、国税庁の資料から推定すると、ほぼ最下位水準だとする論文が発表された。
しかし、調査の方法論に疑問があると指摘する学者もおり、論争が起きている。
東国大の金洛年(キム・ナクニョン)教授は「韓国の所得分配」と題した論文で、国税庁の資料に基づき、ジニ係数を試算したところ、統計庁の発表値0.310(2010年)に比べ0.1ポイント高い「0.371」という結果が出たと指摘した。
ジニ係数は最低が0、最高が1で、数値が高いほど所得分配が不平等であることを示す。
統計庁の発表では、OECDの加盟39カ国のうち、統計を発表している34カ国で17位だが、金教授の試算した数値では5位となる。
金教授は同論文を28日に韓国開発研究院(KDI)、サムスン経済研究所、ソウル大経済研究所が共催するセミナー「韓国型市場経済体制の模索」で発表する予定だ。
統計庁による公式のジニ係数統計は、毎年全国の1万世帯程度を抽出し、設問調査によって算出する。
金教授は統計庁が調査対象世帯を抽出する際、高所得層が漏れていると主張する。
高所得層は所得公開をためらい、統計庁の調査官に対する回答を拒否するためだ。
金教授はその点を補完するため、高所得層については、国税庁の国税統計年報で所得段階別の人数を推定し、統計庁のデータと総合してジニ係数を求めた。
そうして求めたジニ係数は、チリ、メキシコ、トルコ、米国に次いで高かった。
しかし、複数の経済学者は金教授の調査方法に疑問を投げ掛けている。
高麗大の朴英哲(パク・ヨンチョル)教授は
「標本調査である家計動向と全数調査である国税庁の課税資料を混ぜれば、データにゆがみが生じる」
と主張。
KDIの兪京濬(ユ・ギョンジュン)研究委員は
「標本調査で一部の層が脱落するのは当然で、他国も同様だ。韓国だけ国税庁の資料を使い、数値を再算出して国際比較するのは適切とは言えない」
との立場だ。
これについて、金教授は
「全数調査を標本調査に変更する際に生じるゆがみを修正する統計技法を用いており、その方法は米国の経済学者も使用しているものだ。
同じ方法を使用すると、米韓のジニ係数に大差がないにもかかわらず、韓国の(公式な)ジニ係数とは差が生じていることからも、韓国の公式統計に問題があると類推できる」
と指摘した。
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おそらくは、これは韓国経済の奇形構造のもたらしたものだろう。
というより、そうしなかったら韓国はもたない、ということなのだろう。
奇形構造はギリギリのところで韓国の支えているということでもある。
これからは奇形構造からさらに進んで、中国の傘下に入ることによって、何とか韓国経済を維持していくことになるだろう。
破綻を先送りするしか、今の韓国のとれる道はない。
その先送りの方法が、今は奇形構造であり、明日は中国ということである。
この選択は已む得ないことだと思う。
生き残っていくにはそのくらいのことは覚悟しないといけない。
【 見えない歪み 】
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